2025/06/16 09:56
輪島塗の漆器のお手入れはどうすればいいのでしょうか。
一見するとデリケートに見えますが、一般的なガラス器や陶磁器と比べてもとても丈夫ですし、手入れも簡単です。
ただし、自然素材のみで出来ていることから、扱い方のコツも必要あります。
そこで今回は、輪島塗の漆器を長く使うために、お手入れや保管方法についてご紹介します。
1.輪島塗の洗い方
輪島塗は柔らかいスポンジと中性洗剤で優しく洗う。
これでOKです。
そもそも輪島塗は普段使いをするものとして発展してきた漆器です。
使われている国産漆は非常に優れた天然のコーティング剤で、酸やアルカリ、さらに熱湯や湿気にも強いです。
だから、簡単に割れたり欠けたりすることはないのです。
少し補足すると
・食事をした後は早めに洗う。
(食べ残しが固まって落としにくくなってしまいます。)
・ほかの食器やナイフ、フォーク、スプーンなどと分けて洗う。
(一緒に扱うと、微細な傷が入るかもしれないです。)
昔は「洗剤を使わず、柔らかな布で洗う」とも言われていたようですが、洗剤なしだと洗い残しが傷みの原因になる場合があります。
また、「洗ったらすぐに水滴を拭き取る」とも言われますが、ぬるま湯で洗うと乾きやすく、水滴のあとも残りません。
ですから、洗剤を使って、ぬるま湯で洗うのが良い方法です。
輪島塗であれば、普段使いができますので、ほかの食器と同じように、普通に使って大丈夫です。
ちなみに新品の漆器を使い始める際、多少、漆特有のにおいが残っていることがあります。
使っていくうちに消えていくのですが、気になる場合は「米の研ぎ汁で洗う」という方法があります。
2.乾燥
輪島塗のお手入れは、普通なのですが、自然素材ゆえの弱点もあります。
それは「乾燥」です。
絶対に避けたいのが「食器洗浄機」「食器乾燥機」「電子レンジ」による乾燥です。
食器洗浄機と食器乾燥機の場合、熱風を使って食器を乾燥させますが、輪島塗にはこれが駄目なのです。
これをやってしまうと漆本来のツヤを損ない、白く濁った色に変化してしまいます。
しかし、この場合は、影響を受けているのは表面の漆の部分ですから、上塗りすれば元のツヤを取り戻すことができます
(ただし、加飾が入っている場合は、修復作業も必要です。)
だけど、電子レンジとなると厄介です。
漆器の元となる木にゆがみが生じるため、まわりを補強する下地や、表面の漆も影響を受けることになります。
そのため、漆を塗り直しても、またゆがみが出て、繰り返し修復が必要となってしまうのです。
輪島塗は、家電ではなく「手」でお手入れをしなければならないと思っていてください。
3.紫外線
最後に気をつけたいのが、太陽光などによる「紫外線」。
直射日光の当たる場所に放置することは避け、日当たりのいい場所で乾燥させたい場合は、布などを被せておきましょう。
食器棚へしまう際は、ガラス器や陶磁器と重ねないのがオススメですが、もし重ねる場合は上部に置いて下さい。
漆器を重ねて保管する時には、キッチンペーパーなどを間に挟むと、細かな傷を防ぐことができます。
これらの点に気をつけて普通にお使いいただけば、たとえ10年使い続けても劣化を感じることはありません。
むしろ使えば使うほど、漆が変化して風合いを増す。革製品などもそうですが、育てる器と言われるゆえんです。
下地の作業工程をしっかりと施しているのが輪島塗の強みですから、使い込んで、気になってきたら塗り直せばいい。
修理のお値段はお直しの内容によりますが、新品を買い直すより全然お得です。
工芸品はどれもそうなのですが、手入れをしながら、使い続けることが大事で、それが可能です。
モノを大切にする姿勢は、私たちの未来をつくっていくことに繋がります。
自然と共生しながら、日々の暮らしを豊かに楽しむ。
そんな未来を工芸品と共に実現していきたいものです。
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