2025/02/06 17:55
江戸切子は無色透明なガラスを使用し、色を付ける時には薄い色被せ(いろきせ)ガラスを使用するのに対し、
薩摩切子は色を厚く被せたガラスを使用し色合いが全体的に淡いのが特徴です。
江戸切子は、1834年(天保5年)に現在の日本橋大伝馬町のビードロ屋、加賀屋久兵衛が金剛砂を用いてガラスの表面に彫刻で模様を
施したのがその始まりと言われています。
1930年代になると研磨剤を用いた技術が誕生し、多くのガラス職人によって切子が作られるようになりました。
日常の様々な道具が切子で作られるようになり、特に風鈴は江戸の夏の風物詩として人気を集めました。
このようにして、江戸切子は町民文化から生まれて、庶民に愛される日用品となっていき、庶民の手で製作されていました。
対照的に、薩摩切子は、第28代藩主・島津斉彬(なりあきら)の時代に藩の事業として製作されました。
斉彬は切子を藩の産業のひとつにしようと試み、色ガラスの研究を奨励しました。
結果、 紅・藍・紫・緑といった色を生み出すことに成功。
中でも赤に発色したガラスは薩摩の紅ガラスといわれるようになり、薩摩切子を代表する色となりました。
しかし、薩摩切子は斉彬の死後、薩英戦争や西南戦争などの戦禍で製造が途絶えてしまい、
幻の切子と呼ばれるようになってしまいました。
現在、製造されている薩摩切子は、島津家に残されている資料や残された薩摩切子をもとに復元されたもの。
1985年に島津家を中心とした復元事業が始まり、鹿児島県の協力も仰ぎつつ「薩摩ガラス工芸」の手により、
約100年の時を経て、その輝きを復活させました。
1989年には鹿児島県伝統的工芸品に指定されています。
江戸切子と薩摩切子は、どちらも日本の伝統的なガラス工芸品で、切子技法を用いて作られています。
違いは、ガラスの厚さや色味、文様などです。
■ガラスの厚さ
江戸切子は一般的に薄いガラスを使用します。
薩摩切子は厚みのあるガラスを使用します。
■色味/グラデーション
江戸切子は色ガラスと透明ガラスのコントラストがはっきりとしています。
薩摩切子はカットの角度を変えてグラデーションを表現しています。
■文様
江戸切子には「麻葉」「魚子」「亀甲」などの伝統文様が刻まれます。
薩摩切子には伝統文様に加えて「薩摩縞」などの独自の模様が刻まれることがあります。
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